【会社】役員報酬を事業年度の途中で減額した場合ー定期同額給与の「業績悪化改定事由」について

役員報酬を減額する場合は注意が必要です。

処理を間違えると、事業年度を通して支払われた役員報酬の全額が(税務上)経費として認められない可能性もあります。

業績が悪くなったから、役員報酬を減額したいー定期同額給与の「業績悪化改定事由」

要件を満たしていなければ、役員への給与の支払いは、税務上、経費とすることができません。

その役員報酬支給の要件については、以前書きました。

→【会社】役員報酬の支給についてー要件を満たしていなければ、役員への給与の支払いは経費とすることができません。

役員報酬支給の要件の中で、よく利用される「定期同額給与」は、文字通り、「毎月支給される給与が同額である」給与のこと。

支給額を変更する場合は、「会計年度スタート3ヶ月以内」に一定の手続き(株主総会を開催→議事録に変更の旨記載)を踏むことにより金額の変更ができます。

→【会社】定期同額給与-役員報酬の支払いについて、具体的な処理の仕方

ただ、この「定期同額給与」の「会計年度スタート3ヶ月以内」ルール、例外があります。

それ以外の時期、事業年度の途中(事業年度開始日から3ヶ月を過ぎてから)変更することが許されるのは、以下の状況の場合のみとなっています。

① 役員の職制上の地位変更、職務内容の変更

② 経営状況の悪化

今回は上記2つのうち、②の「経営状況の悪化」について書きます。

「経営状況の悪化」要件のことを、「業績悪化改定事由」と言います。

事業年度の途中で役員報酬を減額した場合

通常は、事業年度の途中(事業年度開始日から3ヶ月を過ぎてから)で役員報酬を減額した場合、支給金額が低い方に合わせられます。

例えば、事業年度が4月から3月までの会社の場合、4月から9月までは毎月50万円支給していたが、10月からは支給額が0円だったとすると、この会社がこの事業年度で役員報酬として損金に計上できる金額は、0円となってしまいます。

また、4月から9月が毎月50万円の支給、10月から毎月30万円の支給だった場合は、360万円(30万円×12ヶ月)がこの事業年度において損金に計上できる役員報酬になります。

ただ、この役員報酬の減額は会社の業績が悪化したためであった場合はどうなるのでしょうか。

「業績悪化改定事由」として認められるためには

例外的に事業年度途中での役員報酬の減額が認められる「業績悪化改定事由」について、以下のように規定されています。

“当該事業年度において当該内国法人の経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由(第五項第二号において「業績悪化改定事由」という。)によりされた定期給与の額の改定”

引用:法人税法施行令69①-ロ

「業績悪化改定事由」というのは、「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」があった場合と書かれています。

経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」・・・すごく抽象的です。。。大体法律は抽象的に書かれています。

ただ、ここの部分について、国税庁から見解が出されています。

→ 役員給与に関するQ&A

まず、「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」というのは、「経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じたために行ったもの」であり、その場合が「業績悪化改定事由」に該当するものと考えられると書かれています。

ポイントは、「業績悪化改定事由」と認められるためには、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先)との「客観的な事情」が必要という点です。

単に、「財務諸表の数値が悪いから」(業績が下がった)とか「倒産の危機に瀕した」(資金繰りに窮した)という事情だけでは認められないと書かれています。

「業績悪化改定事由」として認められる具体的な例

具体的に認められる例として、次の3つがあげられています。

“① 株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合

② 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合

③ 業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合”

引用:「役員給与に関するQ&A」P2-3

① については、株主が不特定多数からなる会社の場合、「株主との関係」から、業績悪化の責任から減額したケースが該当します。

ただ、同族会社(役員の一部の者が株主である場合や株主と役員が親族関係にあるような特定の親族が株式の大半を占めている会社)については、注意が必要です。

“上記①に該当するケースがないわけではありませんが、そのような場合には、役員給与の額を減額せざるを得ない客観的かつ特別の事情を具体的に説明できるようにしておく必要があることに留意してください。”

引用:「役員給与に関するQ&A」P3

減額の理由を「客観的かつ特別の事情を具体的に」説明できるようにしておく必要があります。

② については、業績悪化のため、取引銀行からの借入金について、金利の引き下げ・返済期間の延長などが行われ、「取引銀行との関係」から役員報酬の減額がされた場合などが該当します。
③ については、業績悪化のため、「取引先等との関係」から、経営改善計画が策定され、その中で役員報酬の減額が組み込まれた場合などが該当します。

まとめ

役員報酬は、会社の利益調整などに利用されることを防ぐため、金額の変更については細かくルールが決められています。

役員報酬の額を適当に決めるのではなく、まずは、事業年度ごとの経営計画を作成し、事前にシミュレーションすることが大切です。

いざ決算の段階になって、慌てることがないようにないようにしましょう。

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