【個人事業主】会社員の副業はどうやって確定申告する?-雑所得を事業所得で申告するための要件
「働き方改革」…最近よく耳にする言葉です。
政府が「働き方改革」を推進する中で会社員の副業、兼業を促進しています。
会社員の副業について、確定申告が必要?そして具体的にどうやって申告するのでしょうか?
会社員の副業で確定申告が必要な場合
会社員の場合、メインで働いている会社から給与を支給されていて、所属する会社で給与の年末調整が済んでいるケースがほとんどかと思います。
そういった会社員の場合は、メインで働いている会社から得た給与以外の副業の所得(利益)の合計額が20万円を超えた場合は、確定申告が必要となります。
(逆に言うと、所得が20万円以下の場合は確定申告する義務はありません)
ポイントは“所得”が20万円を超えた場合です。“収入”ではないので判断する時に気を付けて下さい!
確定申告ではどう申告する?
個人にかかってくる税金は「所得税」と言います。
その「所得税」の申告をいわゆる「確定申告」と言います。
所得税では、所得の種類を10種類に分類し、申告を行います。
具体的には以下の10種類の所得に分類されます↓
〇利子所得 〇配当所得 〇不動産所得 〇事業所得 〇給与所得
〇退職所得 〇山林所得 〇譲渡所得 〇一時所得 〇雑所得
会社員が会社から得る給料は、「給与所得」となります。
会社員の副業というと、いくつかのケースが考えられます。
① 飲食店の店員やコンビニ、警備員などアルバイトをし、給料をもらった。
② 所有するマンションなどの賃貸し、賃貸料を得た。
③ 得意なこと、専門知識を生かし、自分で事業を行い、収入を得た。
確定申告では、それぞれ、どう申告したらいいでしょうか?
① については、雇い主との間に雇用契約があって得た収入になるので、給料となり、「給与所得」として申告することになります。
② については、土地や建物などの不動産を貸し付けて得た収入となりますので、「不動産所得」として申告します。
そして、③についてですが、基本的には「雑所得」として申告をします。
ただ、一定の要件をクリアしている場合は、「事業所得」として申告することができます。
雑所得と事業所得について
通常、会社員が副業をしていて、その副業について申告する場合、「雑所得」として申告する場合がほとんどではないかと思います。
ただ、雑所得でなく、事業所得で申告する方が様々な税制上のメリットを受けることができます。
具体的なメリットとして以下の6つがあげられます。
① 損益通算
事業所得で赤字だった場合、給与所得など他の所得と相殺ができます。
② 青色申告特別控除
事業に係る利益金額から10万円、または65万円の控除ができます。
③ 純損失の繰越控除
損失が生じた場合、その損失金額を翌年以後3年間繰り越すことができます。
④ 純損失の金額の繰戻還付
当年度に損失が出て、前年度が黒字だった場合、その当年度の損失金額を前年度の利益金額から控除し、再計算された税額との差額を還付することができます。③はよく知られていますが、前年分のみですが繰戻し還付もすることができます。
⑤ 青色事業専従者給与
配偶者などの親族に払う給与を経費にできます。
⑥ 30万円未満の少額減価償却資産の特例
通常は10万円以上の資産については一度に経費にできず、資産計上して使用可能年数にわたり、減価償却費として経費計上していきます。
しかしこの特例を適用した場合、一単位あたり30万円未満の償却資産であればその年に全額経費とすることができます。
ただ、限度額が年間300万円まで、また償却資産税申告は別途必要となります。
※なお、①については白色申告・青色申告のいずれも適用されますが、②~⑥については、青色申告者のみの特典となります。
事業所得として申告するための要件
雑所得で申告するよりも事業所得で申告した方がメリットも多いので、ぜひ事業所得で申告したいと考える方も多いかと思います。
でも、誰もが副業を事業所得で申告できる訳ではありません。
事業所得として認められるためには、要件があります。
判断基準とされているのが、最高裁での昭和56年の判決文にある以下の4要件です。
- 自身の計算と危険において営まれているもの
- 営利性と有償性を有しているもの
- 反復継続して遂行されているもの
- 社会通念上、事業として客観的に認められているもの
事業を行うための設備や備品を揃えたり、人を雇ったり。。。事業を始めるには相当のリスクを背負うことになります。
また、継続性も重要視されます。
そして当然、事業として続けていくには、利益を出していく姿勢は当然求められます。
過去に、事業所得で赤字を出して給与所得を圧縮して納税を免れるといったケースが問題となり、こうした税金逃れのための事業所得に対しては税務署の目も厳しいです。
判断の難しいところではありますが、事業所得として申告するのであれば、上記の要件を満たしていることをキチンと説明できるようにしておかなければなりません。
※なお、不動産貸付に係る申告については、上記の4要件に関係なく、「不動産所得」として申告を行います。青色申告者の場合は、不動産貸付の規模により10万円控除、または65万円控除かが決まります。